下肢静脈瘤治療について

当院では高周波焼灼術と接着剤によるグルー治療を行なっています。

下肢静脈瘤について、当院では開設当初から高周波焼灼手術を行っています。下肢静脈瘤とはどういう病気なのか、ご説明いたします。(新横浜こころのホスピタル、前高知大学第二外科教授 笹栗志朗先生から了承を得て、紹介文を転記いたします。)
図はレーザー治療ですが、当院では高周波焼灼術を行ってます。どちらも治療法はほぼ一緒です。

足の静脈瘤について①

夕方、仕事の終わりにふと自分の足を見ると朝よりも足がむくんでいたり、よくよく見ると足の血管が浮き出て、まるで蛇が足に潜り込んで住み着いたかのようになっている事がありませんか。また、年々くるぶしの周りにシミのような色素がつくようになり、その周囲に炎症が起きて皮膚科の先生に診てもらってもなかなか治らないことはありませんか。こういった症状は、実は足の静脈瘤が原因であることが多いのです。瘤と言っても絶えず高い血圧にいつもさらされている動脈に瘤ができるのは理解できるけれども、押してみても簡単に潰れる静脈にどうして動脈と同じ瘤ができるのか不思議ですね。
足の静脈瘤は人間が立位歩行を始めて以来、人間を悩ませてきた疾患なのです。紀元前1550年のエジプトのパピルスには、蛇のようにうねうねとした下肢静脈瘤の記載がすでにあり、その治療法にも言及されているとのことです。

足の静脈瘤図

足の静脈瘤について②

図1は紀元前4世紀ギリシャのアクロポリスで発見された奉納額で、静脈瘤が形として残された最古のものとされています。
静脈はご存知のように心臓から動脈を伝って送られてきた血液を今度は心臓へ戻す管です。心臓へ戻す力は呼吸や足の筋肉のポンプ作用、また、血液が逆流しないよう静脈に備わっている弁にコントロールされています。足の静脈の血圧は立位によって心臓から足までの血液の重さがそのまま反映され、じっとしていると100mmHg、動脈の血圧と変わらないくらいの数値になります。歩き出すとその値は足の筋肉のポンプ作用や静脈弁の作用によって0−20mmHgまで下がります。手には立位によって足にかかる重力ほどの力がかからないので滅多に静脈瘤はできません。また、お寿司屋さんやケーキ屋さんなどいつも立ったままでその場を動かずに仕事をしている方に静脈瘤が多いのも、足の筋肉を使わずにいるためにポンプ作用が働かず、静脈の高血圧が続いていることによります。長く静脈の高血圧が続くと静脈は拡張して普段はピタッと閉じて血液の逆流を防いでいる弁が閉じなくなり、ますます足の血液の鬱滞を助長して蛇のうねりのようなコブとなります。そうして、その膨らみにより美的にもまた足の重だるさ、ある時は出血、潰瘍などを引き起こし我々を悩ませているのです。
昔から人間の立位歩行と同時に我々を悩ませてきた静脈瘤に対する治療は数多く試みられてきました。

図2は西暦300年代のギリシャの医師オリバシウスによる静脈瘤の手術の記載です。足にいくつもの傷をつけて静脈瘤を引っ張り出して切除するもので、なんとなく痛々しいかぎりで、治癒したとしても美的には勧められません。実は同じような手術は私がまだ若い外科医であった時にも行われていました。

足の静脈瘤図
図1

足の静脈瘤図
図2

現在行われている治療法について

図3は現在行われている治療法です。2mmほど皮膚に開けた穴からレーザーを放つ管を静脈内へ挿入して血管の中から静脈瘤の原因となっている血管を切除する代わりに焼いて血液の逆流を止める方法です。治療は10分もかからずに終わり、美容的にも優れた治療法です。
実はさらに新しい治療法が開発されていてこの春から臨床応用が始まります。医療は長い年月をかけて進歩しています。

足の静脈瘤図
図3